精子提供
ある晴れた秋のこと。
卵胞チェックなどが終わり、エレベーターに乗って
病院を出ようとしたそのとき、小さな女の子が目についた。
何歳ぐらいかなぁ 5歳ぐらいかなぁ
その子に、「ママ、見た?」と言われ、
「ママ?ママはどうかな。パパは見たよ」と答える。
受付近くに男性が一人いて、その人がパパかな?と思ったから。
そしたら、「パパ、いないの」と女の子。
「ママと XXちゃん(自分)と、犬がいて、パパはいないの」
そうなんだ。パパはいないけど、ママは不妊治療してるんだ。
精子提供・・・?かな。
じゃあ、あそこにいた男性は、ドナーさん?
ママは、きっと 診察前に一人で座ってた人だろう。
「ワンちゃんは、何色なの?」
「黒」
「ふ~ん、いいねぇ、黒いワンコ」
そんなことを話してたら、女の子は、エレベーターを指さした。
「来たよ」
なんだか、このまま女の子と話し続けてたくなっちゃったけど。
「あ、思い出した!ママいたよ!もうすぐ来るから待っててね」
といってエレベーターに飛び乗った。